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大企業の成長戦略に変革をもたらす「スタートアップM&A」を通じた新規事業創出とは




大企業における新規事業創出手法の変化 ――なぜ今、スタートアップM&Aが注目されているのか?

日本の大企業を取り巻くビジネス環境は、今やかつてないスピードで変化し続けています。デジタル技術の進展、人口減少や少子高齢化、そしてグローバル競争の激化といった構造的な課題を背景に、既存の事業モデルだけでは成長の限界が見え始めています。こうした中、企業の持続的成長を実現する鍵として重視されているのが「新規事業創出」です。


イントレプレナー型 新規事業

しかし一方で、多くの企業が社内リソースによる“ゼロからの事業開発”に苦戦しているのも事実です。社員が自社のリソース(人材・設備・資金など)を活用して新規事業を立ち上げるイントレプレナー型(社内起業型)の新規事業創出は2000年代から存在しており、社内新規事業コンテストの開催やイントレプレナー育成プログラム、社内ベンチャー制度など、様々な制度や仕組みを作ってイントレプレナー型の新規事業創出を行ってきました。しかし、挑戦的なプロジェクトに対する評価制度が整っていないことや働き方改革によるホワイト企業化、社内における意思決定スピードの遅さや決裁プロセスの複雑さ、リスク回避志向などの組織的な障壁が立ちはだかり、新規事業の創出に失敗するケースも多いです。


オープンイノベーション型 新規事業

また2010年代からは研究機関、大学、他企業などと協力して新規事業を開発する、オープンイノベーション型の新規事業がトレンドとなってきました。当初は研究開発部門が主導することが多く、技術シーズ探索や、PoC(実証実験)主導型のプロジェクトが増加しました。その後、連携先が大学・研究所中心からスタートアップ中心へと変化し、経営企画部門によるCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)活用等が増えてきています。ただ、昨今ではCVCを通じたオープンイノベーションも、大企業とスタートアップの意思決定スピード・カルチャーがすり合わないため、本格的な取り組みになりにくい、 少額出資のため大企業がやってほしいことにスタートアップの協力が得られない、 既存事業部門への利益が明確に説明できずに十分な協力が得られないといった悩みを聞くケースが増えています。


スタートアップM&A型 新規事業

こうした状況を打破する“第三の道”として、Beyondgeが提案するのが「スタートアップM&A」を通じた新規事業創出アプローチです。

一定の成果が出ているスタートアップを買収し、事業を取り込むモデルで、新規事業の垂直立ち上げができることに加えて、グループに取り込むことで連結上も成果の範囲となるため、シナジーの創出がしやすいということが特徴です。



目的別に見るスタートアップM&Aの代表的な3パターン

スタートアップM&Aとは、既に一定の成果を上げているスタートアップを戦略的に買収し、その企業のサービス、顧客基盤、人材、技術、文化などを自社グループに取り込むことで、スピーディーかつ高い確率で新規事業を立ち上げる手法です。

Beyondgeではこのアプローチを、目的に応じて3つの主要パターンに分類しています。


① 共創型M&A(スタートアップM&A×新規事業の共創)

自社の未参入領域やテクノロジー分野に即時参入するためのモデルです。特にB2B SaaSやヘルスケアなどの成長領域では、ゼロイチで自社開発するよりも買収によるスピード重視のアプローチが有効です。


メリット:

  • プロダクト・技術・人材を即座に獲得

  • 既存事業とのシナジー創出や自社アセットの活用

  • クロスセルによる顧客基盤の活用


成功事例・ケース

マネーフォワード:

既存のバックオフィス向けクラウドサービスを強化しつつ、新たな事業領域への参入を果たしています。また買収した企業の顧客基盤を活用することによって、クロスセル機会の創出にも繋がっています。


チェンジホールディングス:

トラストバンク買収(2018年)によるふるさと納税事業への進出、fundbook買収(2024年)によるM&A仲介事業への進出など、一見飛び地に見える新規事業を獲得し、既存事業とのシナジーによって独自の価値創出と他社との差別化を図っています。


② スイングバイIPO(スタートアップM&A×バリューアップ)

グループ会社化したスタートアップに対して、自社の営業・技術・人材・資金といったリソースを供給し、成長を加速するモデルです。共創型M&Aと同様、事業ポートフォリオの多様化に加えて、将来的にはIPOを通じた資本的リターンを得られることもポイントです。


メリット

  • 高成長スタートアップのバリューアップ

  • 自社グループのブランド強化

  • 投資回収の明確な見通し


成功事例・ケース

KDDI×SORACOM:

SORACOM社はIoT向けデータ通信プラットフォームを展開しており、KDDIによる買収後、2年間で契約回線数8万件から100万件へと大幅に増加させることに成功。2024年に上場し、売上高は買収前に比べて、6倍超に成長しました。


Yahoo!×dely:

レシピ動画プラットフォーム「クラシル」を事業展開するdelyは、2018年にYahoo!グループ入りしました。グループ入りの際には売上高3億円でしたが、Yahoo!から調達した資金を活用してM&Aも活用しながら事業の多角化を進め、2024年のIPO時には売上高は34倍の98億円まで成長しました。


③ プログラマティック型(スタートアップM&A×業界再編・ロールアップ)

特定の業界において複数の中小企業やスタートアップを連続的にM&Aし(プログラマティックM&A)、市場構造の変革・再編を起こすることや、業界内での競争優位を確立するモデルです。連続M&Aによってスケールメリットの確立や非効率な業界構造の効率化を目指すと共に、地方企業の事業承継や人材不足の解消にもつながります。


メリット

  • スケールメリットと業務効率の向上

  • 業界内のバリューチェーン再構築

  • 地域経済の活性化と社会的意義


成功事例・ケース

Withmalホールディングス:

動物病院の連続的M&Aを実施し、30施設以上の動物病院を傘下に持っています。グループ入りした病院の業務負担を減らすための継続的な取り組みを通じ、獣医師が診察に専念できる環境を醸成しています。


GENDA:

ゲームセンターの連続的M&Aを主軸に、エンターテイメント業界の業界再編により事業拡大しました。DXによる利益率の改善、海外の店舗取得により海外展開の加速を行っており、創業から約5年で上場し、時価総額は2,000億円を超えるまでに成長しています。



スタートアップM&Aの実現に向けた”落とし穴”

スタートアップM&Aは魅力的な成長戦略ですが、進める上での課題や失敗リスクも高い手法です。以下のような注意点を理解し、計画的に進めることが重要です。


多様なソーシングチャネル

大企業ではソーシング段階で、対象市場のロングリスト・ショートリストを作成して、候補となる企業に対して順次アプローチを行うことが一般的です。しかし、M&A市場では理想的な戦略を描いても事業売却を検討している相手がいないと始まりません。また特にスタートアップM&Aにおいては候補企業側もM&Aありきで動いていないことも多いです。そのためM&A仲介とのネットワーク構築やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)等を活用して、幅広く情報を集めることが必要になります。


Exitの違いによるバリュエーションの違い(IPO vs M&A)

バリュエーション(企業価値評価)の乖離も大きな論点です。通常のスタートアップ投資では将来的なIPOを前提として、成長性を織り込んだ期待値で評価される一方、M&Aでは実績や会計上の合理性に基づいた評価を重視することが一般的です。この乖離が将来的な減損リスクへと繋がる場合もあります。特にベンチャーキャピタルが出資しているスタートアップの場合、投資回収を優先する傾向が強く、交渉はさらに難航します。


複雑な株式構造に起因する難易度の高い交渉

さらに、株式構造の複雑さも見逃せません。多くのスタートアップでは優先株が発行されており、普通株への転換や清算条項の整理に時間とコストがかかります。契約上の権利関係や合意形成のハードルも高く、M&Aプロセスが長期化する要因となっています。既存株主とどのような順番で、どのようにコミュニケーションを行っていくか、シナリオを固めておくことが大前提となります。


企業文化や意思決定スピードの違い

スタートアップM&Aで最も多く課題になるのは、大企業とスタートアップにおける企業文化やスピード感の違いです。スタートアップは小規模かつ意思決定が早く、柔軟に動くことが特徴。一方で大企業では、稟議やガバナンスの重さが足かせになりがちです。買収後のPMIにおいて、こうした文化のギャップが原因でキーパーソンが離脱したり、思ったようなシナジーが生まれなかったという事例も少なくありません。最初から完全統合を目指すよりも、一定期間、独自運営を続けてもらって徐々に統合していくことが望ましいです。

Beyondgeでは、クライアント企業のM&A支援やCVCの運営支援を行っていることに加えて、自社でもスタートアップ投資やスタートアップM&Aを経験してきていること、キャピタリストやM&Aコンサルタントといった多様なプロフェッショナルが密に連携することで、これらの課題に適切かつスピーディーに対応することが可能です。



BeyondgeにおけるスタートアップM&A支援のリアル

Beyondgeは、M&A戦略の策定からM&A実行支援、M&A後のPMIまでを一貫して担う“共創パートナー”として、多数の実績を残してきました。ここでは一部の成功事例をご紹介します。


PontelyのWolf Insight買収による事業の複線化

同社は遺伝子検査×IoT×ペットフードというユニークな事業モデルを持つスタートアップです。

Beyondgeは同社にM&A担当の取締役を派遣し、M&A戦略の策定からソーシング、ビジネスDD・Valuation、対象会社との交渉シナリオ策定および交渉の実施、投資家からの資金調達、契約締結、PMI等、M&Aプロセスを一貫して支援しました。

買収後、ペットフード事業は順調に成長し、これにより同社は通年の黒字化を達成すると共に更なる事業展開を目指しています。





上場企業A社によるスタートアップ買収によるクロスセル強化

A社は事業の1つに地方創生を支援するSaaS事業を持っており、クロスセル可能な事業を持つスタートアップを買収しました。


BeyondgeはA社に対しプログラマティックM&A(=連続M&A)体制の構築支援をしています。本案件では、ターゲットとなるサービス領域、規模、予算感を明確にし、複数のM&A仲介等に説明・連携する中で、多くの案件が持ち込まれる状況を作りました。また提案された多くのスタートアップの中から一緒に成長していけそうなスタートアップ・事業を選定し、ビジネスDD・Valuation、対象会社との交渉シナリオ策定および交渉の実施、契約締結まで一貫して支援しました。


買収後のサービス名は変更せず継続し、既存のSaaS事業と連携したクロスセルによるシナジー創出を進めています。


BeyondgeによるM&Aキャピタルラボ買収によるスタートアップM&A強化

Beyondgeではクライアント企業の支援だけでなく、自社でのスタートアップM&Aも進めています。

Beyondgeでは大企業・スタートアップを中心に、プログラマティックM&Aの支援を行っておりM&Aを一貫して進めることができるケイパビリティを持っています。そのケイパビリティを活用して、M&A領域の事業を強化するため、M&A事業を行うスタートアップ買収を進め、新たな事業としてスタートしています。ターゲットとなる複数のスタートアップと会った上で、一緒に成長していけると確信できたM&Aキャピタルラボ社を買収しました。

スタートアップM&Aを強みとするM&Aキャピタルラボ社を起点に、M&A仲介および関連する周辺領域を新たな事業ドメインとして拡大し、BeyondgeとM&Aキャピタルラボ社で連携してサービスを提供するケースも増えており、短期間で着実な成果につなげています。





他社との違いを生むスタートアップM&Aの“実行力” ――Why Beyondge?

Beyondgeには、複数スタートアップ創出、出資およびその後のバリューアップ、自ら創業・起業やExitした経験等を持つメンバーが多く在籍しており、新規事業の推進において実行力の高い支援が可能です。


また多くのM&A支援する会社がM&Aプロセスの一部のみに強みを持っていますが、Beyondgeには自らM&Aに主体者として関与した経験を持つメンバーも多く、戦略コンサルのような“絵に描いた餅”で終わらせず、FAS(ファイナンシャルアドバイザリー)のような一部のプロセス支援(DD等)や、M&A仲介会社のように案件の探索・ソーシングや紹介するだけするでもなく、戦略策定~PMIまで一貫した伴走支援を行うことが可能です。


加えて、M&AキャピタルラボというスタートアップのM&Aに強みを持つ仲介機能を保持していることや、Beyondge Capitalという自らスタートアップ投資を行う機能を持っていることで、様々なネットワークからの案件探索が可能となります。


  • 社内での新規事業開発がうまくいかない

  • スタートアップとの協業が進まず形骸化している

  • M&Aは初めてで進め方も分からない


このような状況に直面している企業に対して、Beyondgeは“変革の起点”となる機会を提供します。今、求められているのは「アイデア」だけではありません。それを実現するための「スピード」と「仕組み」、そして「実行力」です。スタートアップM&Aは、単なる資本取引ではなく、自社の未来を共に創る“人と事業”との出会いです。Beyondgeは、そうした出会いを確かな成果へとつなげるための最良のパートナーとして、全力でサポートします。




<参考>

BeyondgeによるプログラマティックM&Aの解説はこちら



Beyondgeによる新規事業支援の解説はこちら



Beyondgeのサービス紹介はこちら



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