サーチファンドとは? 経営者を志す個人が会社を引き継ぐ新しい事業承継と、Beyondgeが買収後まで支える理由

後継者がいない企業の割合は50.1%。帝国データバンクの「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」によると、この割合は7年連続で下がっているものの、今も約半数の企業が後継者を決められていません。
業績が安定し、従業員も取引先もいる会社が、後継者がいないという理由だけで将来を描けなくなる。こうした状況を変える選択肢の一つとして、国内でも広がりつつあるのが「サーチファンド」です。
Beyondgeは、グループ会社のBeyondge M&Aパートナーズと連携し、サーチファンド支援サービスを開始しました。本コラムでは、サーチファンドの仕組みと国内の現状、サーチャーが直面する壁を整理したうえで、Beyondgeが買収後の経営まで支えることにこだわる理由をお伝えします。
サーチファンドとは──経営者を志す個人が、会社を探し、買い、経営する仕組み
サーチファンドは、経営者を志す個人(サーチャー)が投資家から資金を集めて中小企業を買収し、自ら社長として経営を引き継ぐ仕組みです。1984年に米国で始まり、スタンフォード大学経営大学院を中心に研究と実践が重ねられてきました。
流れは大きく4つの段階に分かれます。
サーチ:投資家の支援を受けながら、引き継ぐ会社を探します。
買収:投資家の出資を受けて会社を買収し、サーチャーが社長に就任します。
経営:社長として事業を引き継ぎ、会社の価値を高めます。
エグジット:数年後、株式の売却などを通じて投資家に資金を返します。
売り手のオーナーにとっては、会社を残したまま、意欲のある次の経営者に託せることが特長です。大企業の傘下に入るM&Aと比べて、社名や雇用、地域とのつながりを保ちやすい形でもあります。
数字で見るサーチファンド──米国の実績と、国内の広がり
米国:40年で積み上がった実績
スタンフォード大学経営大学院の「2024 Search Fund Study」は、1984年以降に米国とカナダで組成された681本のサーチファンドを分析しています。投資家から見た全体の内部収益率(IRR、税引前)は35.1%、投資額に対する回収倍率は4.5倍でした。中小企業の承継と投資の両方が成り立つ仕組みであることを示す数字です。
国内:毎年10本前後が誕生
国内初のサーチファンドによる事業承継は、2014年に行われたとされています。サーチファンド・ジャパンの「Search Fund Market in Japan, 2025 Observations」によると、2025年末までに活動を始めたサーチファンドは累計48本です。活動を終えた39本のうち30本がM&Aを実現し、実現率は約77%と推計されています。
金融機関も担い手に
担い手も広がっています。日本政策投資銀行(DBJ)や日本M&Aセンターなどが設立したサーチファンド・ジャパンは、約10億円の1号ファンドと約30億円の2号ファンドを運営しています。2025年4月には、日本M&Aセンターホールディングスが地域金融機関と組む地域特化型の「J-Search」が、北海道と南九州で運営を始めました。
国内の事例──会社を引き継いだサーチャーたち
実際に会社を引き継いだサーチャーの歩みを見る と、本当の仕事は社長に就いた後に始まることが分かります。
山梨県の住宅会社を引き継いだ例
広告代理店やコンサルティング会社で経験を積んだあるサーチャーは、山梨県で住宅事業を営む会社(売上高約10億円)の社長に就きました。就任後は部署ごとの朝礼を一つにまとめ、従業員と個別に面談しました。原材料費の高騰を販売価格に反映できず、粗利が減っていたことにも気づき、価格の見直しを進めています。
滋賀県のデジタル教材会社を引き継いだ例
別のサーチャーは、数千社を調べたうえで、滋賀県で小中学生向けのデジタル教材を開発・販売する会社を選び、2022年に社長に就任しました。家族を東京に残して単身で移り住み、少子化で市場が縮むなか、競合の少ない0〜4歳向けデジタル教材の開発を進めています。
28歳で社長に就き、エグジットまで果たした例
ゲームセンター向けの景品卸を引き継いだあるサーチャーは、副社長として入社し、約1年の引き継ぎを経て28歳で社長に就任しました。業界の知識がないなか、自ら手を動かしてDXを進め、従業員の信頼を得ながら売上を伸ばしました。その後、業界大手へのM&Aを通じてエグジットを実現しています。
3つの事例に共通するのは、社長に就いた後、従業員との関係づくり、価格や事業の見直し、新しい事業づくりに、ほぼ一人で向き合っていることです。
サーチャーが直面する3つの壁
Beyondge M&Aパートナーズは、売り手側のM&A支援を通じて、サーチャーの志が実現に至らないケースを見てきました。壁は大きく3つあります。
① 案件が見つからない
中小企業のオーナーにとって、会社を譲ることは一度きりの大きな決断です。相手が法人ではなく個人であれば、「本当に任せて大丈夫か」と慎重になるのは自然なことです。仲介会社から見ても、資金の裏付けや経営の力が見えにくい個人の買い手は、案件を紹介する順番が後回しになりがちです。サーチ期間には限りがあるため、出会える案件の数がそのまま成否を分けます。
② 交渉とDDの経験が少ない
意向表明の条件設計、提示価格の根拠づくり、デューデリジェンス(DD)での論点整理。多くの サーチャーにとって、どれも初めての経験です。独占交渉期間内に最終契約まで進めなければ、案件そのものを失う恐れがあります。また、DDで見つけた課題を「買うかどうか」の判断だけに使い、買収後の改善に生かしきれないこともあります。
③ 買収後の経営を一人で担う
社長に就任した日から、事業の引き継ぎ、従業員との信頼づくり、経営の立て直しを同時に進めなければなりません。投資家への報告もあります。前の社長が長年かけて築いた関係のなかで、外から来た新しい社長が一人で判断を重ねる負担は大きく、ここでつまずくと、会社の成長も投資家への返還も遠のきます。
Beyondgeのサーチファンド支援──M&Aの実行と買収後の経営を、一つのチームで
Beyondgeのサーチファンド支援は、M&Aの実行をBeyondge M&Aパートナーズが、買収後の経営と成長をBeyondgeが担い、案件探索からエグジットまでを一つのチームで支えるサービスです。3つの壁に対応して、次の3つの支援を行います。
案件の紹介
Beyondge M&Aパートナーズが、投資基準に合う案件を継続して紹介します。サーチファンド向けの手数料プランで、サーチ段階の費用負担を抑えます。
交渉とDDへの支援
Beyondge M&Aパートナーズが、株価算定書の作成から意向表明、最終契約まで、アドバイザーとして交渉とDDを支援します。
買収後の経営の伴走
Beyondgeが、事業計画と100日計画の策定から、AIによる業務効率化、新規事業、追加買収まで、社長の実行を支えます。
対象は、サーチファンドを立ち上げるサーチャーと、サーチファンドに出資する投資家です。
Beyondgeの強み──会社をつくる、育てる、売る、買う
Beyondgeグループは、会社をつくる、育てる、売る、買う、そのすべてを自ら手がけてきました。この経験を、サーチャーの支援に生かします。
1. 買収前に見えた課題を、買収後の計画に引き継げる
M&Aの支援は、最終契約で終わることが多くあります。Beyondgeグループでは、M&Aの実行と買収後の経営を同じチームが担います。そのため、DDで見つかった課題、たとえば価格設定の遅れや特定の担当者への業務の偏りを、そのまま100日計画の最初の施策に組み込めます。
2. 売り手支援で築いた案件ネットワーク
Beyondge M&Aパートナーズは、2018年の設立以来、スタートアップや中小企業の事業売却を売り手側で支援してきました。そこで築いたオーナーとのつながりを生かし、サーチャーに案件を紹介します。グループとして買収後まで支える体制があることは、売り手が個人の買い手を信頼する材料にもなります。
3. 9社への出資と経営参画の経験
Beyondgeは、Beyondge Capitalを通じて9社に出資し、メンバーがCXOや取締役として経営に参画してきました。事業計画、資金調達、採用、エグジットまで、経営の現場で判断を重ねてきた経験を、社長に就いたばかりのサーチャーの支援に生かします。AI活用や採用の支援も、グループ内で提供しています。
これまでの取り組み──まちの不動産屋 承継プロジェクト
2026年10月、Beyondgeグループは株式会社プレイバッカーズと協業し、後継者のいない地域の不動産会社の承継に取り組む「まちの不動産屋 承継プロジェクト」を開始しました。地域に根ざした次の担い手が会社を引き継ぎ、Beyondgeグループが承継の実務と承継後の経営を支える取り組みです。サーチファンド支援の考え方を、一部先行して実践しています。
▼詳しくはこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000116962.html
事業承継を、会社の次の成長の始まりに
サーチャーは、自身のキャリアと人生を懸けて一社と向き合う買い手です。その覚悟が、案件に出会えない、交渉で孤立する、買収後に一人で抱え込む、という理由で実現しないのは、売り手にとっても、従業員にとっても、投資家にとっても大きな損失です。
後継者を探す企業にとって、サーチャーは覚悟を持った次の経営者です。投資家にとっては、実行力のあるチームがサーチャーを支えることが、出資の判断を後押しする安心材料になります。
Beyondgeは「あたらしい世界のその先へ」をビジョンに掲げています。事業承継を、会社を残すための手続きで終わらせず、会社が次の成長に向かう始まりにしたい。日本の中小企業から新しい経営者が次々と生まれていく流れを、グループ全体で支えてまいります。
サーチファンドの立ち上げを考えているサーチャーの方、サーチファンドへの出資を検討している投資家の方は、お気軽にご相談ください。
▼サービスの詳細・お問い合わせはこちら
https://www.beyondge.com/contact
出典
・帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」(2025年11月) https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
・Stanford Graduate School of Business「2024 Search Fund Study」(2024年) https://www.gsb.stanford.edu/faculty-research/centers-initiatives/ces/research/search-funds
・サーチファンド・ジャパン「Search Fund Market in Japan, 2025 Observations」(2026年1月) https://www.searchfund.co.jp/news/20260119
・ニュースイッチ(日刊工業新聞)「事業承継問題解決へ、政投銀がサーチファンドを運営する狙い」(2024年10月) https://newswitch.jp/p/43210
・日本M&Aセンター「地域特化型サーチファンド『J-Search』が新始動」(2025年3月) https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2025/x20250331/
・テレビ東京の取材記事(2023年5月) https://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/202305/13254.html
・りそなの法人向け情報サイト掲載記事(2025年7月) https://www.resona-biz.jp/management-strategy/search-fund-succession-benefits-examples-05/
